現在の競馬
現在の第四代目ダービー卿、エドワード・リチャード。ウィリアム・スタン
リー氏から直接うかがったダービー卿(スタンリー家)代々の勝負服にまつわ
る秘密を紹介しよう。
日本ではあまり見る機会はないが、ダービI卿の勝負服デザインは黒一色。
イギリスでは柄のないデザイン、つまり一色だけの勝負服を使えるのは元々
貴族でも上流階級だけに許されている特権だそうだ。そのなかでも黒一色とい
うのは、ダービー卿家の象徴でもあり誇りでもあるものだという。
数年前にジャパンカップで来日したウィジャボードは現ダービー卿の持ち馬。
当時のビデオか何かをお持ちの方は見ていただきたいのだが、黒い勝負服は
どこか威厳をもっているようにさえ見えるのである。
だがここで、さらに気をつけてもらいたいことがある。
真っ黒い勝負服のなかにあって、上から2つめのボタンだけがなぜか白いことが認できはしないか?真っ黒ななかに一ヵ所だけ白いボタンはちょっとヘンだ。
まあ、事情を知らなければ、塗料が取れちゃっ
たくらいにしか思えないが、実はこれにはきちん
とした理由があるのだ。
現四代目ダービー卿の3代前、肥代目ダービー
卿・フレドリック・アーサー・スタンリー氏の時
代のことである。所有の馬が全家郷勝て葱い碑環代があったのだそうだ。走れど走れど勝てない暗黒の日々。
「なぜ勝てない?悪い馬ではないのに」
1頭だけではない。不調は所有馬すべてに及んでいた。
当時のダービー卿は頭を悩ませた。下馬評ではダントッ人気にもなる。でも
レースになるとなぜか馬が走ってくれない。血統もいい、調教もいい、騎手も
いい。3拍子揃っているのに負ける。「一側がに呪われているのではないか?」と
思うくらいの連敗だった。
ついには家族からも「いっそのこと勝負服の色変えちゃえば?」という大胆
な意見まででる始末。イギリスの貴族も、日本人と同じでゲンはかつぐようだ。
しかしそんなことをしてしまっては、代々伝わる黒一色の勝負服を捨ててしまうことに。それではご先祖様に申し訳が立たないと、ダービー卿はさらに悩んだそうだ。
ところが、連敗脱出の日は突然やってきた。
ある大レースにでてきたダービー卿所有馬に乗る騎手の首には、白いスカI
フが巻かれていた。おそらく寒かったのだろう。勝負服の胸元からスカーフの端っこがヒョコッと飛び出ていた。
するとどうだろう。いままでの不調がまるでウソのように圧勝してしまったのだ。
喜んで騎手を迎えるダービー卿。いままで悩んでいた日々はなんだったんだ。
こりやあめでたい。さあさあ、殊勲騎手を称えようではないか?と。そこに現
われた騎手。巻いていたスカーフの端っこが、ピョコッと第2ボタンのあたり
から顔を出している。それを見てピンときたダービー卿。「これがラッキーアイ
テムだったのか」と、このレースを機に、全部黒色だった勝負服のボタンを、
上から2つめだけ白に変えてしまった。
それからというもの、ダービー卿の所有馬がひどい連敗をすることはなくな
ったのだという……。ちなみにダービー卿が、牡馬ではなく代々牝馬ばかりを
所有するのにもそれなりの理由があると現ダービー卿はおっしゃった。
「ウチは牝馬を大事にする家系なんです……」
これはジョークととらえていいものだろうか……?
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